生活保護基準の切り下げに反対する抗議文

nagoya_p_net2007-12-04

 厚生労働大臣 舛添要一 殿
 厚生労働省社会・援護局長 中村秀一 殿

        2007年11月30日
          長谷川市郎(反貧困名古屋ネットワーク実行委員会)
            宛先 名古屋市中村区則武2−8−13 笹島労働者会館気付
            電話 080−3618−2525

     生活保護基準の切り下げに反対する抗議文
 厚生労働省では「生活扶助基準に関する検討会」をすでに四回ほど開催し、生活保護基準の見直しをすすめ、第四回の検討会では、生活扶助額を引き下げる方針を固めたと報道されている。われわれは生活扶助基準の切り下げに反対する。
 (1)生活扶助基準の切り下げは、国民の貧困化と窮乏化をますます進めるものである。検討会では2004年度の全国消費実態調査結果にもとづき、「収入が全世帯のうち下から一割に当たる低所得世帯では、夫婦と子供一人の勤労世帯」の生活費よりも生活保護世帯の生活扶助額の方が高いとか、「現在の生活保護水準が、保護を受けずに働いている勤労層の生活費を上回り、勤労意欲をそぐ恐れがある」からだとか等々の理由で、生活扶助基準を切り下げようとしている。しかし、この水準均衡方式や勤労者の勤労意欲をそぐという論理には、「健康で文化的な最低限度の生活」の基準生活費に関する何の理屈もない。ただ、下に合わせろという安易な判断があるのみであり、これではどんどん下方へ向って切り下げられるのみである。
 さらに、生活保護受給者を、低所得者や「ワーキングプア」に対比させて、いわば貧困者を他の貧困者と比較するのもまちがっている。富裕者と貧困者と比べて、貧困者の「健康で文化的な最低限度の生活」の基準を立てるべきなのである。
 (2)われわれは、生活保護基準の切り下げを前提に見直しをするのではなくて、まず貧困者の実態調査をやるべきと考える。生活保護受給者百五十万人強の他に、どのような低所得者がいるのか、近年生活保護水準以下の「ワーキングプア」と呼ばれる勤労者が何百万人もいるということが言われているが、そうした貧困者の生活実態がつかまれて始めて貧困問題を解決していく出発点が得られるのである。
 (3)生活保護基準が切り下げられるならば、生活保護受給者の生活がさらに苦しめられることになり、窮乏化する。のみならず生活保護基準に連動している他の国民の生活も圧迫され引き下げられることになる。・最低賃金の引き上げが抑制される、・国民健康保険の減免基準が下がる、・介護保険の保険料・利用料、障害者自立支援法にもとづく利用料の減額を受けられない人が増える、・地方税における非課税基準が下げられる、・公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準が下げられる、等々。これらは社会の貧困化、窮乏化を進めることになり、社会不安定を起こすことになるだろう。
 (4)生活保護利用者や低所得者・「ワーキングプア」等の当事者抜きに、検討会を急ピッチで進めることも誤っている。貧困問題を解決することは、貧困があってはならないという価値観を社会的につくりあげることと結びつかなければいけない。社会的連帯による貧困問題解決の方法をとらなければならない。拙速な検討会で生活保護基準の引き下げをやるべきではない。