効率重視?指定管理者制度で「なごやボランティアNPOセンター」職員総入れ替え(JANJAN記事)

nagoya_p_net2008-03-22


http://www.news.janjan.jp/area/0803/0803203247/1.php
Esaman2008/03/22
名古屋市内には『NPOセンター』と呼ばれるものが3つ存在します。中でも「なごやボランティアNPOセンター」はこの4月、職員がすべて入れ替わります。これまで行われていた業務は、ひとまず、そのまま継続されるとのことなので、利用者としては、あまりあわてる必要はなさそうなので少し安心しました。しかし……

交流会会場。いろいろなNPOがお店を出していて、座る場所もないほどの人が集まっている。
目次
1.名古屋市内に3つのNPOセンター
2.青木研輔さんに話を聞きました

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名古屋市内に3つのNPOセンター

 3月20日、名古屋市の中心部にある『なごやボランティアNPOセンター』で「ぼらんぽ交流会」が開催されました。このNPOセンターは、来る4月から指定管理者が変更になり、職員がすべて替わってしまうとのことでした。

 名古屋市内には『NPOセンター』と呼ばれるものが3つ存在します。『NPOプラザなごや』は、歴史ある民間の組織で、名古屋駅のちかくにあります(3月いっぱいで閉鎖されます)。市民運動界隈では通称『民間のNPOセンター』『職安の近くのNPOセンター』と呼ばれているところです。

 『あいちNPO交流プラザ』は、愛知県の運営する組織で、県庁の建物の1階部分にあります。通称『県のNPOセンター』『大手庁舎』と呼ばれているところです。

 『なごやボランティアNPOセンター』は、名古屋市の委託を受けた名古屋の市民団体が管理するセンターで、名古屋の中心部の伏見にあるものです。通称『伏見のNPOセンター』と呼ばれているものです。

 すべてのセンターが『NPOセンター』という呼称で呼ばれていて、お客が間違えてほかのNPOセンターに行ってしまう、という混乱を引き起こしたことも、時々ありました。



名東区災害ボランティアのコーナーで、災害食を試食する参加者。カップ麺にお餅をいれて食べる。薄く切ると3分でおいしくなる。餅はサバイバル食だと再認識した。
職員が入れ替わる「なごやボランティアNPOセンター」の今後

 今回の交流会の会場となった「なごやボランティアNPOセンター」のある伏見駅周辺は、名古屋の繁華街の中心である栄周辺と、交通の中心である名古屋駅を結ぶ真ん中あたりにあるオフィス街にあたります。栄から名古屋駅までは、歩こうと思えば歩けない距離ではないところで、この2つの駅を結ぶ一帯が、名古屋で最も人通りと会社などの数の多いエリアにあたります。

 また、なごやボランティアNPOセンターが入っているビルの向かい側にある白川公園は、大きな市民集会が行われたり、デモ隊の出発地点となることもある市内有数の公園です。愛知万博の開催前には野宿者のテントが無数に張られていましたが、愛知万博を控えた2005年1月、行政が強制的に排除して、今はテントはありません。(参考:ホームレス小屋の跡地にシャガの群生)。夜、同公園では音楽やダンスの練習をしている若い人たちが無数にいて、夜遅くまで人通りはそれなりにあります。

 同NPOセンターは、2002年4月に名古屋市の直営の組織として発足したものですが、2004年8月に「なごやボランティア・NPOセンター条例」の制定により、指定管理者として、名古屋市内で長らく活動する3つの団体(ボランタリー・ネイバーズ、名古屋NGOセンターボラみみより情報局)によって構成されるコンソーシアムで運営されていた組織で、他の2つのNPOセンターとは少し性質の変わったセンターでした。また、他のNPOセンターよりも交通の便もよく、印刷なども格安で行えることから利用者が多い施設です。

 前述のように、同NPOセンターは今回の交流会を最後として、いままで管理していた職員の人たちがすべて入れ替わってしまうということで、多くの人たちが集まっていました。同NPOセンターを普段の活動の場所にしている人や、名古屋で長年活動しているNGONPO、これからボランティアをやろうと思っている人、近所の人などが来場していました。参加者の活動紹介の90秒スピーチ、くじ引き大会、などが行われ、いままで働いていた職員の方と、新しく働く職員の方の挨拶が行われました。



交流会の最後の挨拶をする青木研輔さん。このNPOセンターでもっとも長い職員の人。
職員のみなさんからの挨拶

 『もうじき管理者が替わり、ここで働くことができなくなるのは非常に残念です。ですが、職員として働いていた人たちは、もともと名古屋でそれぞれの活動をしていた人なので、近所で会うこともあると思います。そのときはまたよろしくお願いします』との挨拶がありました。また、4月から新しく管理者となる人からは『みなさまが親しんで利用されているNPOセンターのサービスの質を低下させることなく、継続して利用できる施設としていきたいと思っています。よろしくお願いします』との挨拶が行われました。

 4月から指定管理者が替わりますが、同NPOセンターで行われている業務は、ひとまずはそのまま継続されるとのことです。利用者としては、あまりあわてる必要はなさそうなので少し安心しました。新しい管理者の代表の中里喜好さんは群馬の方で、今回の管理者変更に伴い、愛知県に引越しをしてきたそうです。筆者はNPOというと、地域に住んでいる人が地域の課題をやるものだと、なんとなく思っていたのですが、このような一般企業のような例もあることを知って少し驚きました。他の新しい職員の方は、愛知県の方や岐阜の方で地域の人だそうです。

2.青木研輔さんに話を聞きました

 最後に、同NPOセンターが名古屋市の直轄であったころから働いているもっとも古い職員の、青木研輔さんに話を聞きました。

●今回の管理者の変更は、どういった経緯で行われたのでしょうか?

 名古屋市の場合、指定管理者制度には、名古屋市以外の地域のどこからでも参入が可能です。今回の新しい管理者である『ワーカーズコープ』さんは、本部が東京にあるNPO法人です。私達も、この地域で活動している人ばかりですし、継続してこの施設で働いていきたいと言う要望を出していましたが、残念なことに、昨年の9月の名古屋市の選定会では継続が認められませんでした。おそらくは、運営コストなどが基準となって選定されているのではないかと思いますが、どのような基準で選定されたのかについては、情報公開を求めていかないと、細かいところまでは、よくわかりません。

 名古屋市は他の自治体に比べて市の運営する施設は多いですが、指定管理者制度を導入して委託しているところは少ないです。また、名古屋市でもどの地域でも、こういった行政の作った施設の管理者が、行政から民間へ引き継がれる例はよくあることで、また難しい話ではないのですが、行政の施設を管理している民間の管理者から民間の管理者へ変わる例は、全国的にも珍しく、いろいろと苦労が多いです。

●最後に個人的な感想をお願いします。

 続けてやりたかったです。実感として、ほんとうにそう思います。初めは手さぐりでやっていてわからないことも多かったのですが、最近は色々と体制も整ってきました。とくにここ数年は、利用者のみなさんのこともよくわかるようになってきましたので、センターでのサービス内容も増やし、今後もっと発展してゆくチャンスがありました。このチャンスを私達が担えないのはとても残念です。もう4年働きたかったというのが正直な感想です。

 現在、新しい管理者の方にも業務の引継ぎをしていますが、書類上の記載だけで分からない業務も多く大変です。とくにNPOに関わるものは、利用者の皆様が普段どのような活動をされている方でどんな人なのか、ということがわかって、いろいろと話が進むところが多いですから、慣れないうちは難しいのではないかと思います。これからしばらくの間、新しい管理者の職員の方も、見学のためにこのセンターに来ていただきますので、短い間ですが引き継げるものは引き継いでいきたいと思っています。

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 確かに、最近の伏見のNPOセンターは、サービスの向上が目覚しく便利になっていました。当初は印刷用紙も持ち込まないといけなかったのですが、最近では、何種類かのカラー用紙も買えるようになっています。ホチキスの針や、講演会でパネラーに出すミネラルウォーターも販売するようになっていました。これらのことは、些細なことのように思えますが、市民団体は人手が少なく、講演会の準備や普段の活動などで、こういった細々とした品ものを買いに行く手間も、けっこう負担だったりするので、これは大変助かるサービスです。販売されている品物も、ほぼ原価に近い価格でしたから、このような経営努力は、おそらく『事業収入』としてはあまり数字は出ていないかもしれませんが『住民サービスの向上』としては多大なものがあったと思います。

 民間の設立したNPOセンターは、この3月いっぱいで閉鎖になるとのことです。これによって『名古屋のNPOセンター』の呼称と場所にまつわる混乱は、伏見と県庁との違いになって、少しは収まりそうです。

 今回の管理者の変更には、行政がNPOの委託先を選ぶ場合、効率重視が第一で県外からも人がやってくる、ということもあるとなると、なんだか一般企業のような感じがして、少し違和感のようなものも残りました。NPOにも効率は大切だと思いますが、NPOだからこそ、効率だけでは達成できない問題もあるのではないか? とくに、NPOセンターのような、地域の人と人をつなぐ仕事には、効率だけでは『住民サービスの向上』につながらない部分もあるのではないか、と思いました。新しい指定管理者になって、NPOセンターのサービスがどのように変化してゆくのか、あるいはかわらないのか、今後も注目していきたいと思います。


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 下記、名古屋市のホームページ:『なごやボランティア・NPOセンター指定管理者の候補者選定結果について』より

1.選定委員会開催日時
平成19年9月19日(水)午前9時25分から午後0時35分

2.選定委員会委員(敬称略)
会長:市民経済局長 長谷川博樹
副会長:市民経済局理事 加藤久
委員:市民経済局地域振興部長 葛迫憲治
委員:日本福祉大学情報社会科学部教授 千頭
委員:名古屋文化短期大学教授 志水暎子
委員:公認会計士 二村友佳子

3.候補者として選定された団体
特定非営利活動法人ワーカーズコープ

4.申請団体(申請順)
特定非営利活動法人ワーカーズコープ
・ぼらんぽセンター・コンソーシアム

5.審議の経過
(1)審査方法を検討した。
(2)提出書類による審査を行った。
(3)申請者からプレゼンテーションを受けた後、質疑応答を行った。
(4)委員による意見交換、評価を行った。
(5)評価結果に基づき、候補者を選定した。

6.選定委員会における意見
 特定非営利活動法人ワーカーズコープの提案は、他都市における同種施設の管理運営実績や安定した経営を行うことができる健全な財務状況を背景として、サービス面における創意工夫並びに運営面における事業収入の確保及び支出の縮減への取組みが見られ、指定管理者制度の趣旨である「住民サービスの向上と経費の削減」を達成することが期待できる。

お問合せ先:市民経済局地域振興部地域振興課市民活動係