『KY解雇』が発生? 名古屋市の施設の指定管理者交代のその後(JANJAN記事)

nagoya_p_net2008-06-15

http://www.news.janjan.jp/area/0806/0806130507/1.php
Esaman2008/06/15
前回、指定管理者の交代劇について報告いたしましたNPOセンターについての続報です。前回の記事でNPOセンターは、民間のものが閉鎖されて、伏見にある名古屋市のものと愛知県の2か所」と書いていましたが、この5月から愛知県の管轄のNPOセンターも閉鎖されて、同じく愛知県管轄の「ウィルあいち」というところに移転になりました。さて、ここで解雇問題が発生し、大きな問題となっています。

前回記事:効率重視?指定管理者制度で「なごやボランティアNPOセンター」職員総入れ替え


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 前回、指定管理者の交代劇について報告いたしましたNPOセンターについての続報です。

 前回の記事で「NPOセンターは、民間のものが閉鎖されて、伏見にある名古屋市のものと愛知県の2か所」と書いていましたが、この5月から愛知県の管轄のNPOセンターも閉鎖されて、同じく愛知県管轄の「ウィルあいち」というところに移転になりました。NPO法人の認証作業などの機能も合わせて、すべてウィル愛知のほうに移動したとのことです。



写真=「カゴ」がなくなってしまって雑然とするチラシ置き場。前に指定管理者だったころの 写真=「耳に痛い市民の声聞いて運動の進め方を工夫」と比べるとわかりやすい。


 伏見のNPOセンターの報告を行います。

 4月から以前の職員の姿がまったくいなくなってしまって、その際に、前回の指定管理者であるコンソーシアムが、それぞれが所有していた備品を引き上げたので容量がわからなくなってしまったり、ノウハウの引継ぎがうまくいってなかったりしていたので、従来のサービスが全く提供できなくなって大混乱に陥る、という一幕もありました。たとえば、パソコンや大型プリンター、ポットなどが、それぞれの団体の所有物だったので引き上げられてしまいました。とはいえ、パソコンは買って導入されたので新しくなり、この部分だけは、利用者としては良い点でした。

 従来からのサービスのひとつであった大型プリンターについては、新しい指定管理者であるワーカーズコープの人は、当初「設備やサービスは従来の指定管理者のときから低下させない」ということを、3月に行われた交流会でも約束していました。途中から「採算にあわないので導入しない」というようなことを言っていましたが、利用者からの要望の声が強く、導入されて継続されることになりました。

 ですが、様々な活動情報のチラシをいれていた「カゴ」は、なかなか良い代替品がみつからないようで、依然、チラシ置き場は混乱したままです。その「カゴ」は、チラシを立てていれるもので、チラシが曲がったりしないスグレモノでした。この「カゴ」は、チラシ専用のものとして作られたわけではないと思いますが、なかなかみかけないものです。チラシをどう見栄えよく配架するか、というのは、ライブハウスやコミュニティカフェ生涯学習センターやNPOセンター施設のような施設では、なかなか問題となっていることだと思います。


チラシをクリップで留めていますが、とりにくいです。以前の「カゴ」は、なくなってしまいました。
 センターの内部は、いろいろな掲示物や「NPOで働こう」というコーナーなどもなくなってしまって、全体的に、すこし殺風景になっています。また、ソフト面の問題は移行が難しく、業務は滞ることが多いようです。かつては、スタッフの多くが、それぞれNPONGOの現場を経験していた専門家だったので、NPOの設立、NPOの運営、国際協力の方法など、さまざまな分野の相談に応じていました。ですが、新しく職員になった人たちは、NPOやボランティアについては未経験の人がほとんどで、そのような相談業務は、まったくこなせていないようでした。とはいえ、未経験ながらも熱心な方が多く、業務は混乱しつつも、すこしづつ軌道にのっているようにも見えます。

 伏見センターを現在、指定管理をとって運営しているワーカーズコープという組織は、東京に本部があるという団体で、別名を「日本労働者協同組合連合会(日本労協連)センター事業団」というところで、労働者協同組合なのだそうです。「労協」という略称で呼ばれています。農協や生協と似たように「組合」なのですが、根拠となる法律がなく法人格がないので、かわりにNPO法人をつくって様々な事務処理を解決しているとのことでした。組合なので、働く人は出資金を出して働くもので、理念としては「人のいのちとくらし、人間らしい労働を、最高の価値とします」「協同労働を通じて『よい仕事』を実現します」とのことです(HPより)。現在、法制化を目指して運動をしているようです。


すったもんだの末に、やっとで導入された大型プリンター。LOVE&ビンボー春祭りでも、アースデイでも、このセンターの大型プリンターをアテにしていたので、ポスターの印刷ができませんでした。
「態度が悪い」と突然の不当解雇
 名古屋市からの指定管理者の交代劇に、どこか不透明な感じもうけていたワーカーズコープでしたが、やはり「名古屋市」との絡みで、大問題が発生しました。この問題を「なごやいきなりユニオン」によって配布されたチラシと、不当解雇されたNさん当人の話により、見てみます。

 このNPOセンター担当の名古屋市の職員が、一部の部屋の予約抽選システムを「予算をとってつくってしまったのだから導入しろ。これは決定事項だ」と迫ってきました。対して、そのシステムは効率的ではない(すでに長い間、予約の開始日に集まってもらって抽選して、そのあとは電話でも応対、というシステムで予約をしてもらっており、一部の部屋だけをそのシステムに移行すると利用者が混乱する。また、インターネットやパソコンに詳しくないご老人を阻害することにもなる)という問題点を、日常業務にも慣れてきて、利用者に年配の方も多いことを知ったあるNさん(NPO職員)が指摘しました。

 後日、名古屋市の職員は「話し合う雰囲気ではない」ことを理由にして、NPOセンターの管理職に抗議を行うと、管理職は、利用者の便宜を図って問題点を指摘したNさんを『市への「態度」が悪い』として、名古屋市の職員の方の現場への無理解を棚上げして、一方的に解雇通告をしたのです。

 この出来事、名古屋市の職員の態度も含めた、やりとりを見ていたNさんの職場の同僚たちは、この解雇は不当であると抗議を行ないました。そうしたところ、NPOセンターの管理職は一時期、解雇を撤回する旨を言い出したものの、再びNさんが1人になった隙を突いて解雇を通告したので、即日、職場の人たちで労組を結成、使用者側に団体交渉を申し入れ、翌日、使用者側の不当解雇を認めさせ、見事、職場復帰を認めさせました。

 この団体交渉の現場に、筆者は居合わせなかったのですが、参加した人たちの話によると、団体交渉に押しかけた「仲間」は、センターの利用者、解雇された当該の友人や恩師、日雇いの仲間、野宿の仲間、コミュニティユニオンの仲間など、いろいろな人たちで27・8名。数時間に及ぶ大交渉だったそうです。団体交渉によって、不当解雇が撤回されたのは、ひとまずよかったのですが、事実経過については、いろいろと細かい相違があるようなので、今後の団交の継続をまって、報告したいと思います。

 コミュニティユニオンで活動している人によると…

 『労働者協同組合の理念は、労働者の活動をしている私達も、とても良いと思ってみていました。そのような施設で今回のような事件が起きるのは残念です。ユニオン活動をしていると、労働者のための施設とか、福祉のための施設などの、お金儲けを第1の目標としていないはずの組織からの『不当解雇』の相談を受けることが多くなっています。お金設け以外の理念のある組織だから、使用者と労働者の関係が曖昧で一般企業よりも、よけいに酷いことを強いてしまう、という土壌があるのかもしれません』

 長らく労働運動をしてきた老練な人の話によると…

 『解雇撤回を勝ち取ったのはよかった。しかし、今回のように、全く一部の隙もない『完全な不当解雇』も珍しい。交渉戦略としては、納得しないという態度を示しておけば、あまりの内容の不当さに、使用者側のほうが、じきに恐ろしくなって折れるだろうから、あの場で押して解決せず、もう1回断交を設定して、その間、当該の人はゆっくり休む、という手でもよかったかもしれないね。当然その間も、給料を取って。でも不当解雇撤回はよかった』

 たしかに、このあと、当該の方は心労が祟ったのか、しばらく寝込まれたようです。しかしながら「態度が悪い」という曖昧な理由による解雇は、かなり問題なのではないかと思います。また、その「態度」の相手が、名古屋市というのも、強いひっかかりを感じる点です。「相手は指定管理者として指定をしてくれた名古屋市だぞ、空気を読め」という、言外の意味が多分に含まれているのではないか、と思います。

 この施設は、確かに名古屋市の指定管理をうけて運営している施設ではありますが、市民が利用するための施設です。前任の管理者の方々は、常に自分が「どちらの人間として話をしているのか」ということについて、細心の注意をはらって仕事をしていた、という話を、よく聞きました。行政の側は、よく現場の利用者のことを考えずにものを言ってきたり、自分たちの都合を優先させるように圧力をかけてきたりすることが、あったようです。そのような「問題」が発生した際に、なにも考えずに上のほうばかりを向いているようでは、指定管理者としての意義はなくなるのではないかな、と思います。

 指定管理者の選定にかんするプレゼンの際に、このワーカーズコープは、前任のコンソーシアムでは到底できないような価格で提案を行い、文字通り仕事を「かっさらっていった」という話を、以前の管理者のみなさんから聞きました。そのような数字の提案は、企業の経営努力によるものと思いたいのですが、もし仮に、働く人たちを酷使して得られた「効率」だとしたら、ひどい話だと思います。また、その「指定管理の獲得」の際に、名古屋市に対して、なにかあったときには便宜を図るように、という「空気」があったのだとしたら、それこそ背任ではないかと思います。団交も行なわれる模様です。紆余曲折のワーカーズコープと、NPOセンターの今後に注目したいと思います。

配布されたチラシの全文

名古屋KYカット事件
「労働者の協同組合」を謳うNPOがKY(空気が読めない)理由に不当解雇
伏見ボランティアセンターで職員が問答無用・即日クビに!

 2008年5月2日、名古屋市所有のの公共施設「なごやNPO・ボランティアセンター」(以下センター)において、名古屋市の指定管理団体、特定非営利活動法人ワーカーズコープ(以下ワーカーズコープ)は、職員Nさんを即日解雇した。

「人と話をしようとする態度ではない」「この組織に信頼をもっていない」などという、極めて主観的・抽象的理由をあげてのものであった。また、それらは口頭でのものであり、書面の提示もなかった。その後5月4日、名古屋イキナリ労組との団体交渉により、経営側は改めて書面を提示してきたが、その内容は、事実は当初から解雇通知であったものを、最初は退職勧奨による合意にもとづくものであったなどという虚偽で固められたものであり、逆に解雇通知の無効性を明らかにするようなものでしかなかった。あまりに稚拙な解雇通知であることを認めたのか、解雇通知は同日撤回され、Nさんは無事に職場に復帰することができた。

 ワーカーズコープは、労働者による協同労働を謳う「労働者協同組合」である。
「雇い、雇われる」という関係の超克を目指す勢力が、現実には資本主義社会のルール以下のことをやっていたわけであり、これは到底許される行為ではない。また、「格差社会」「社会的貧困」などという問題が広く社会的に認識されてくる中で、「NPO」や「労働者協同組合」と称する組織が、このような暴力性をあらわにするというのは、「NPOネオリベ化」ともいうべき事態であり、社会に対して深い失望を与える行為であろうことは明らかである。

 私達はこの事件が引き起こされた原因の究明と、Nさんに対する謝罪を要求し、今後もこの問題に取り組んでいきたいと思っている。この問題に関心を寄せるすべての人々に協力を求めたい。

 名古屋イキナリ労組(ユニオン) E-mail:nagoyaikinari@yahoo.co.jp 電話070−5455−6323

 「名古屋NPO-KYカット事件」の経緯
 4月1日より、「ぼらんぽセンター・コンソーシアム」に代わり、「特定非営利活動法人ワーカーズコープ」(以下「ワーカーズコープ」)が新たに名古屋市の指定管理者として、名古屋市・伏見にあるセンターの運営管理を行うことになった。4月1日の事業開始に至る前より、同所の業務は人手が足りず、慢性的な労働力不足状態にあった。そのような状況にも関わらず、職員は懸命に仕事に励んできた。しかしながら5月2日、ワーカーズコープ伏見営業所にて、東海開発本部長Kは、Nさんに解雇処分を言い渡した。解雇事由は二つ。?「顧客」であるところの名古屋市との信頼関係、?コンサルタント契約を結んでいる「特定非営利活動法人 市民フォーラム21・NPOセンター」(以下「フォーラム21」)との信頼関係を、それぞれ損ねせしめたというものであった。後日、私達の求めによって、解雇通知書が提出されたが、K以下の管理者は、2日の時点では「態度が悪い」という曖昧な理由を口頭で示すのみで、段階を一切踏まえない即日解雇という、とんでもない暴挙に出たのであった。順をおって、解雇事由とされた事件を説明したい。

 ?「名古屋市との信頼関係を損ねせしめた」
 発端は4月24日木曜日、センターの担当部署である名古屋市地域振興課の役人が、「第一研修室」の貸室予約について、インターネット上に申込・抽選ができるシステムを稼働させたいと、センターを訪れたことから始まった。センターで利用できる貸室は全部で3部屋ある。その利用申し込みには、3か月先の申込から可能であり、まず朝10時30分のセンターにおける抽選、それから電話・FAX・Eメールと種類があり、センターでの抽選が優先されるというルールになっている。それを紙台帳にて管理するというシステムになっているのであるが、ここに上記のシステムが導入された場合、予約のダブルブッキングが予想され、現場は大混乱すること必至である。また、センターの利用者にはインターネットのできない高齢者の方も多く、インターネットを利用できる人たちだけを一方的に有利にするシステムの導入には問題がある。さらに、従来の申込の手順を変更する場合、利用者への周知が徹底されなければいけないが、指定管理者変更にともなう移行業務も十分に終えていない状態であるにもかかわらず、市はすぐにでも導入する旨通告してきたのであった。Nさんを含めた職員はその問題点を伝え、導入の可否、またその時期についてを再検討するよう申し伝えた。また、導入するのであれば、ネット申し込みシステムから疎外される利用者への対策を講じなければいけない旨も伝えた。しかし市は、これは決定事項であるとの一点張りであり、それについて意見をするのは不当だと主張したのであった。その後4月28日、名古屋市職員は上司を引連れて東海開発本部事務所を訪れ、24日の件において、Nさんの発言は認めがたく、全く信頼関係が築けない旨話し、ワーカーズコープ東海開発本部長Kはそれに対して謝罪した。


 ? 「特定非営利活動法人 市民フォーラム21・NPOセンターとの信頼関係を損ねせしめた」
 センターの事業として、講座の運営がある。4月より職場では、極めて重要な懸案として、センターの年間講座計画の見取り図についての議論が交わされた。本部長Kも出席のもと、4月23日、それまでの計画では講座の効率的運営ができないという理由から、職員Sの提案により講座計画の抜本的見直しが議決され、翌24日、若干の修正のうえ、基本的にはS案が決定事項となった。しかしながら4月30日、フォーラム21の担当者Mを招いた会議で示された資料には、議決されたはずのS案とは全く異なった講座計画が、センター所長Nから配られ、話もその資料が前提となってはじめられた。職員Nは、会議で決定された事項ではない旨、その場で示された案が、講座運営上全く魅力を欠くものであり、それ故集客が見込めない旨発言したのであった。ワーカーズコープと同組織である「日本労働者協同組合連合会 センター事業団」(以下(センター事業団)の専務補佐であり、事実上、東海地域におけるワーカーズコープの最高責任者Sは、2「それは内部の問題であるから、今話をするべきではない」との旨Nを叱責した。明くる5月1日、センター事業団専務補佐S、東海開発本部長Kは、フォーラム21のM氏、上司であるF氏に謝罪した。

 ―尊厳無視の即日解雇 撤回勝ちとるも、未だなされぬ謝罪
 上記?、?の経緯を経て5月2日、センター所長NとKは、Nさんを呼び出し、市への「態度」が悪いと叱責した。職員として当然のことを述べただけだとのNさんの説明は受け入れられず、Nさんは、市との信頼関係を損ねせしめたという理由で即日解雇を言い渡された。

 その後名古屋イキナリ労組は、管理者側にに団交を申込み、5月4日、解雇撤回を勝ち取ることができた。しかしいまだに事実の究明はされておらず、Nさんに対する組織としての謝罪も受けていない。


「名古屋KYカット事件」のチラシ。ほんとうに、いきなりできてしまった「いきなりユニオン」は、略称が「イキロウ(生きろ)」だそうです。

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関連サイト: 名古屋イキナリ労組
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