トヨタ社員の過労死確定へ 国、控訴断念

2007年12月15日08時59分 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1215/NGY200712140009.html

トヨタ自動車の堤工場(愛知県豊田市)の元従業員が急死したのは過労死だったと認
め、遺族補償年金などを不支給とした豊田労働基準監督署の処分を取り消した11月
30日の名古屋地裁判決について、国は控訴期限にあたる14日、控訴の断念を決
め、判決が確定した。これを受けて、豊田労基署は遺族補償年金などの支給手続きに
入るが、その際、サービス残業代の算定が焦点になる。原告側がトヨタに対し、労災
補償の上積みを申し入れることも予想される。

 判決は、02年に急死した内野健一さん(当時30)の死亡直前1カ月の時間外労
働時間を106時間45分と認定。52時間50分と算定した労基署側の主張を退
け、「量的、質的に過重な業務に従事して疲労を蓄積させた」として労災にあたると
の判断を示した。

 労基署側が「業務外」と主張した「創意くふう提案」「QCサークル活動」など品
質や職場の改善にかかわる活動について、判決は「事業活動に直接役立つ性質のもの
で、使用者の支配下における業務と判断するのが相当」と指摘した。

 国は「新たな事実が判決で認められた結果、判決が認定した時間外労働時間は現行
基準に適合していると認めざるを得ない」(厚労省幹部)と判断。控訴審で判決を覆
すのは困難とみて控訴を断念した。

 従業員の自主的参加と位置づけ、一部を除いて残業代を支給してこなかった活動
を、企業の業績向上を支える「業務」とみなす法的判断が定着すれば、トヨタの労使
が社員の働き方の再検討を迫られるのは必至だ。こうした活動に広く人件費がかかる
ようになれば、労務コストの増大は避けられず、好業績のブレーキになるおそれもあ
る。

 「QCサークル」をはじめ、現場の従業員自身によるカイゼン活動は大手製造業を
中心に日本の産業界に幅広く定着しており、影響はトヨタだけにとどまらない。「自
主的参加」を理由に「サービス残業」を強いるような働き方に警鐘を鳴らしたともい
える判決が確定したことで、時間外労働の定義の見直しにつながる可能性もある。

 QC活動などを時間外労働時間に認定した判決が確定したことへの対応について、
トヨタ広報部は「今後、判決内容を詳細に検討していきたい」とコメントした。

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トヨタ>「社員死亡は労災」国控訴せず認定判決が確定
12月15日3時15分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071215-00000014-mai-soci


愛知県豊田市トヨタ自動車工場の男性社員が深夜勤務後に不整脈で倒れて死亡した
のは労災だとして、妻が豊田労働基準監督署長を相手取り、労災不認定処分の取り消
しを求めた裁判で、国側は14日、国側敗訴とした1審・名古屋地裁判決について控
訴しない方針を明らかにした。不支給処分の取り消しを国に命じた1審判決が確定す
る。

 1審判決によると、同社堤工場の社員、内野健一さん(当時30歳)は02年2月
9日午前4時20分ごろ、残業中に不整脈で倒れて死亡した。妻博子さん(37)=
同県安城市=が同年3月、豊田労基署長に遺族補償年金などを申請したが、同署長は
03年、不支給処分とした。

 1審判決は「心停止は過重労働が原因」と因果関係を認め、労災に当たると認定。
職場の能率向上を図るトヨタの生産方式「カイゼン」に絡み、内野さんが関わった業
務の改善策などを記入する「創意くふう提案」や、職場改善の目標に取り組む「QC
サークル」などについて「運営に必要な準備を社内で行っており、業務と同様」と判
断した。

【石原聖】

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トヨタ過労死訴訟 国側が控訴断念
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/071215_3.htm

トヨタ自動車(愛知県豊田市)に勤務中に、工場内で倒れて死亡した内野健一さん
(当時30歳)の妻博子さん(37)(同県安城市)が、国を相手取り、労災と認め
ず、遺族補償給付金を不支給とした決定の取り消しを求めた訴訟で、国側は控訴期限
の14日、控訴を断念した。このため、労災を認定し、不支給決定を取り消した名古
屋地裁判決が確定する。

 判決確定の知らせを受けた博子さんは、「夫のようにサービス残業で大変な思いを
している人がまだたくさんいるので、会社は、この判決をしっかりと受け止めてほし
い」と話した。

 内野さんは同社堤工場(豊田市)に勤務していたが、2002年2月9日午前4時
20分ごろ、工場内で倒れて致死性不整脈で死亡した。判決は、内野さんのサービス
残業も業務と認め、「長時間労働は継続的で、業務と死亡の関連性は強い」と認定し
た。

(2007年12月15日 読売新聞)